1月から2月の「新春」に花をつける梅も、盆栽愛好家の中でも人気です。花もつきやすく、暑さや寒さにも強いことから、育てやすいところが人気の秘密でしょうか。
梅のような花の付く盆栽は、庭のない住まい(アパートやマンション)でも季節を楽しめるとあって、「育ててみたい!」と思われるのも不思議ではありません。
今回は、盆栽として梅を育てる楽しさ、梅の育て方、季節ごとにどのような手入れをすればよいのかを広く解説いたします。どうぞご参考になさってください。
梅とは?どんな特徴がある?
梅は、桜と同じく「バラ科」の植物です。太陽光や風通し、水を好み、肥料も必要です。花色も白から淡いピンク、濃いピンクまで幅広く、咲き方も一重と八重とがあります。
バラ科の植物にありがちな害虫の被害もあり得ますので、日々の観察や手入れを怠らないようにしなければなりません。
梅の手入れスケジュール
他の植物と同様に、梅も、季節ごとに手入れや管理法が変わります。年間を通しての手入れを、季節に合わせてご紹介します。
新春
うまくすれば、1月から3月まで花を咲かせてくれます。そして葉が出始めます。成長期に入り始めるしるしです。明るい場所に出してあげましょう。庭やベランダがないときは、一番明るい窓際に置いてください。
水は1日1回~2回程度与えます。土の乾き具合をしっかり確認して、水をあげる頻度をはかるようにします。
春から初夏
4月から6月頃までは、本格的な成長期へ入る準備の時期です。新春のころと同じように、明るい場所で育てます。
花が終わったら花がらを摘み、「お礼肥」をあげてください。油かすを発酵させた固形肥料や、油かすだけでは不足しがちなリンやカリウムを含む液体肥料も使用するとよいでしょう。
盛夏
7月から8月中は、気温が高く、直射日光も強い時期です。庭木のように直射日光に慣れた成木ならまだしも、ミニ盆栽にとって直射日光は葉を焼いてしまう原因となりますので、半日蔭に場を移します。
室内で育てている場合は、明るい窓辺のままで大丈夫です。西日が直接差し込む部屋の場合は、少し窓から離す工夫が必要かもしれません。
本格的な成長期ですので、水切れは一番の大敵。乾燥気味にすると、次の時期の花芽が付きやすいとされていますが、失敗すると枯れてしまうことも考えられますので「適度な水やり」を心がけるのがベストです。
秋から冬
9~10月の秋には、必要に応じて植え替えをします。植え替えが必要なのは、鉢の底から根が出始めている、もしくは水はけが悪くなったときです。梅の場合、特に若い木は根の張りが早く、根詰まりしやすいですので、注意をしてください。
まだまだ日光を必要とする次期ですので、窓辺の明るいところで保管します。そして肥料も与えましょう。
霜を嫌いますので、屋外の場合は霜よけ(根元に藁を置いてやるなど)をしますが、屋内の場合まず霜の心配はありませんので窓辺で管理しても平気です。
しかしながら、暖房器具からでる温風に直接あたらない場所に置いてください。
水やりに関しての注意
梅は、「水が好き」という特徴を持ちながらも、同時に「湿気に弱い」という面を持ち合わせています。
- 土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える
- 水が鉢の底から垂れ落ちないようになったら、鉢皿に戻す
意外と盲点なのが、「水が好きだから」と、鉢皿の水をそのままにしてしまうことです。確かに水は鉢皿に残りますが、これではいつまでたっても土の中に湿気がとどまってしまい、根腐れを引き起こしてしまいます。鉢皿に水が残るようであれば、きちんと捨ててください。
「土が乾いてからしっかり水やりする」ことには、他にも意味があります。乾いた土にたっぷり水を与えると、土中にある湿気を含む空気を追い出し、新しい空気(酸素)を送り込むことになります。この点でも、水やりは「ただ水を与えればよい」ものではないことを理解しておいてくださいね。
虫や病気に関する注意
梅は、カイガラムシやアブラムシの付きやすい樹木です。これは室内で育てる盆栽でも同じです。
ネットで調べるとおわかりになるとおり、カイガラムシがどこからやってくるのか不明と思われる方は多いようです。ですが、実際に樹木の根元部分や、枝や葉の込み入った部分に、このカイガラムシがいることがあり、驚くことがあります。
カイガラムシには多くの種類がいますが、すべてにおいていえることは「早期発見/早期駆除」が大切です。カイガラムシの中には、成虫となるとまさしく貝殻のような硬い殻に覆われ、駆除しづらくなってしまうものもあります。
早めに見つけて、ティッシュでつまむ(通称「テデトール」=手で取る)のが最善ではありますが、虫嫌いの方にとってこれは苦痛でしょう。梅に害のないカイガラムシ用殺虫剤を使用することも検討してください。
次いで、アブラムシですが、個体が小さいので見逃しがちです。特に葉の裏についてしまうと、「気が付かないうちにびっしり」という状況に陥ってしまい、テデトールにも限界があります。
このときもまた、梅に害のない殺虫剤を使用します。しかしながら、室内で育てる梅の盆栽の場合、殺虫剤の使用はためらわれるものです。このときは、バスルームでシャワーを使います。葉が傷まない水圧で葉に水をかけますが、葉の裏を重点的に狙いましょう。
日頃の水やりを兼ね、葉水を与えるのも、害虫駆除/予防には大事なことなのです。
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これまでは、年間を通した基本的なお世話の仕方をご説明しましたが、これから以降は、梅の盆栽を好みのスタイルに仕立てるための方法をご紹介しましょう。
芽摘み
初夏、葉が1枝に7枚ほどついたころ、芽摘みを行います。特に盆栽仕立ての梅の場合、急激に大きくすることを目的とはしていないでしょう。きちんと芽摘みをしておかなければ、盛夏にぐんぐん増える夏目が枝を太らせてしまいます。
葉すかし
枝が混みあった部分で、葉が重なり合うと、害虫を見逃すことがあります。また、日照を確保できない、空気のとおりが悪くなることで、病気が発生してしまうかもしれません。これを防止するのが「葉すかし」です。
5月頃、葉が増え始めるタイミングで、葉を間引きします。新しい枝(梢)の一番下に現れる小さめの葉を根元からカットします。とはいえ、一気に取り除いてしまうと後に問題が生じることがあります。枝の成長が著しい場合、従長枝(葉がない部分が長い枝)が生じ、見苦しくなってしまうからです。
葉すかしも適度に行い、枝の様子を見て従長と感じられたら、後に芽摘みで対処することもひとつの方法です。
剪定
梅の盆栽の剪定は、2月中に終えるのが理想的です。花が終わると、葉を出そうと動き出します。葉の芽は枝の緑色と茶色の境目あたりにあるはずですが、この葉の芽を傷つけないよう、緑の枝を葉の芽ぎりぎりの部分でカットします。
大事なのは、葉が開いてしまう前までに剪定をすること。タイミングを逃し、葉の芽が開いてしまうと、それにつれて新しい枝がどんどん伸びてゆくからです。
この方法で剪定をすると、今の樹形を保つことができますので、ミニ盆栽のまま楽しみたい方はぜひチャレンジしてください。
植え替え
植え替えも剪定と同じタイミング、つまり2月中に済ませておくのがベストです。もしも鉢の底から根が見え始めたり、水はけが悪くなっていたりするなら、鉢の中で根が渦を巻いているかもしれません。
そのような状態は根腐れの原因となりますので、「大きくしたいのか」「ミニ盆栽のままで楽しみたいのか」によって、根の状態を“仕切り直し”しなければなりません。
鉢から土ごと根を取り出し、土をほぐします。根と傷めないよう、箸やピンセット、やわらかい歯ブラシなどを使い分け、土を落とします。そして傷んでいる古い根や、根の先の方を適度に切り落とします。
新しい用土を植え替え先の鉢底が隠れる程度に敷き、針金を使い鉢と根を固定、鉢や根の隙間に用土を詰めていきます。
水をたっぷりと与え、土と根をなじませたら植え替えは終了。根の切り詰めの程度は、根の傷み方や、次の鉢のサイズに応じて検討します。
まとめ
梅の盆栽は、桜と同様、日本人に「春」を感じさせてくれる人気あるものです。品種によっては香りも楽しめ、より季節感を与えてくれるもの。大事に育て、毎年花を楽しみたいですね。
盆栽は、樹木を“ミニチュア化”して楽しむものですので、庭に植えるときよりも、より丁寧なケアが必要です。樹形以前に、葉や枝に虫がついていないか、病気は発生していないか、根腐れの前兆はないか…多くの側面から観察し、早めに対応しなければなりません。
今回の記事を参考に、しっかりお手入れをしてあげてください。