最近、植物好きの方の間で「苔」が人気です。
「まるで小動物のようなモフモフ感が好き!」
「健気なイメージに癒される」……。
そんな方も多いようです。
苔は盆栽の土を覆うように使うことも多いのですが、苔そのものを小型の鉢で育てたり、苔玉にしたりと、用途が広いのも「苔人気」の理由です。
今回は、盆栽に使う苔や、単体で楽しむ人気のコケ、苔の種類、コケの育て方など幅広くご説明します。
「苔の育て方は難しくない?」
そんな思いを持っている方にも役立てていただけます。
苔の種類と育て方
苔といっても、種類や特徴はさまざま。
まずは、「人気のコケにはどんな種類があるの?その特徴は?」といった質問にお答えしていきましょう。
ヤマゴケ
ヤマゴケは、盆栽の土の表面を覆ったり、苔玉やコケテラリウムを作ったりするのに適した苔です。
「ヤマゴケ」と呼ばれますが、詳細にご説明すると、
ホソバオキナゴケ(細葉翁苔)=日陰~半日陰・乾燥気味を好む
アラハシラガゴケ(粗葉白髪苔)=日陰~半日陰・湿度の高い場所を好む
などの総称です。
いずれにせよ、適度な湿度があれば青々と、乾燥すると白っぽくなるのが特徴です。
スナゴケ
スナゴケは、屋根瓦の小さな隙間や、ブロック塀の割れ目などで自生する、とても強い苔です。
強い日差しや乾燥に強い特徴があり、これを利用して屋上緑化に利用することもあります。
保水機能はありませんので、盆栽の土を覆うのに使われることはほとんどありません。
スギゴケ
苔テラリウムに多く使われるのが、スギゴケです。
まるで杉の葉のようにトゲトゲした姿が、スギゴケという名の由来です。
1年で3センチほど伸びますので、成長を目で見て楽しみたい方に向いている苔といっていいでしょう。
比較的日光が大好きな一方で、乾燥を嫌います。
乾燥すると花のように開いた葉を閉じますが、適度な水分に触れると、また青々とした状態に戻ります。
ハイゴケ
ハイゴケは、「苔玉」によく使われる苔です。
「這苔」と書くように、文字通り這うように広がる苔です。
日照りや乾燥にも強く、日本中のあちらこちらでみることができますし、育て方も特に難しくありませんので、「苔玉」に使うコケとして人気があります。
庭の用土を覆う「グランドカバー」としても使うこともできますので、苔類の中でも用途が多い品種といえるでしょう。
コケ4種「育て方/特徴」
上でご説明した代表的なコケ4種の特徴を、わかりやすい表にしてみました。
この表からも、「苔」といってもそれぞれ生育に適した環境が違うことがわかります。
盆栽の用土に張り付けるのに適しているコケ、苔玉や苔テラリウムで楽しむのに適したコケに分けられるのもご理解いただけたのではないでしょうか。
「何にしたいか(苔玉か、盆栽の飾りか)」から、「どの品種を選ぶべきか」を考えてみてください。
では、次で、盆栽の樹木と苔の関係についてご説明します。
盆栽用土に張り付けてある苔の扱い方
盆栽を購入したとき、既に用土に苔を貼ってあることがありますが、これがときに問題を起こすことも考えられます。
次の2点が代表例ですが、もしもトラブルを起こすときは思い切って盆栽の用土からはがしてしまうことも検討しましょう。
1.盆栽に水を与えるとき、水をはじいてしまう
盆栽の用土全体に苔が貼られている場合、ときに盆栽を傷めてしまうことがあります。
密集したコケが水をはじいてしまい、盆栽用土に水が入り込まないことが原因です。
盆栽用土の保水性を保ち、見た目にも美しくする役割を担うコケですが、水がしみ込まないのでは意味がありません。
また、固形肥料の置き場所に困ったり、液体肥料が入っていかないこともあるでしょう。
水がしみ込まないときの対処法
もしも水がしみ込まないときは、思い切って苔を用土から外してしまうか、バケツにはった水に盆栽を鉢ごと浸けて水を与える(ドブ漬けともいいます)するしかありません。
ですが、どうしてもコケを貼った状態が好みならば、苔を一部分だけ残し、苔をはがした部分に化粧砂を置き、盆栽の根元を美しく演出する方法もあります。
2.苔玉仕立ての盆栽が崩れてしまう
苔玉に根を包む仕立ての盆栽もありますが、この苔玉が割れてしまうこともあります。
盆栽の成長に伴い、根が張ってしまうことで、苔玉が割れてしまうのです。
こうなってしまうと、「どうしよう」と慌ててしまうでしょう。
苔玉が割れてしまったときの対処法
もしも苔玉盆栽の苔玉部分が割れてしまったら、一度根を整理して、盆栽用の鉢への植え替えをおすすめします。
後々の手入れがラクになりますし、水や肥料の与え方に悩まずにすむからです。
それでも、やはり「苔玉盆栽が好き!」という方は、次の動画が参考になります。
一度トライしてみるのもいいでしょう。
※樹種にマッチしたコケを購入しなければならないことに留意してください。
では、苔そのものの楽しみ方についても、次でご紹介します。
苔も盆栽!流行中の「苔玉」「苔テラリウム」って何?
盆栽といえば「樹木を植えるもの」ですが、今ではその概念も幅広くなり、苔などの植物も含むようになってきています。
その流れの中で「苔玉」や「苔テラリウム」も人気となっているのです。
では、改めて苔玉と苔テラリウムをご紹介しましょう。
苔玉(苔盆栽)の由来と育て方
出典:https://www.bonsaimyo.com/products/detail873.html
苔玉盆栽をシンプルにし、鉢などに入れずコケそのものを楽しむのが「苔玉」です。
苔玉盆栽は、江戸時代に流行したという説があります。
盆栽の根が鉢からあふれ出そうになったとき、植え替えをするまでの間、簡易的にコケで根を守り、陶器のお皿に置いて愛でたのが始まりなのだとか。
苔玉の育て方は、次の通りです。
- コケの品種に合わせた環境を整える
- コケに触れたとき乾いている、持ち上げたとき軽くなっているとき、たっぷりと水を与える(水がうまく入っていかないときは、苔玉から出る空気が止まるまでドブ漬け)
室内でも楽しみたいところですが、2~3日室内に飾り、2~3日は外に出す、を繰り返すことで健康な状態を保つことができます。
苔テラリウムの育て方
苔テラリウムは、アクリルなど透明な容器に土を入れ、そこにコケや他の植物、飾りを配置して楽しむものです。
苔の品種によっては、「蒸れること(高すぎる湿度)」を嫌うことがありますので、そのコケに合った容器や場所選びがとても重要です。
特にカビが生えないように注意しましょう。
- 水を与えすぎない
- 風通しの確保
- カビが生えてしまった場合、土や苔を容器から取り出し適度に乾燥させる
- 容器を消毒する
といった手入れをし、再度テラリウムを作り直します。
まとめ
苔は、盆栽の見栄えをよくする、用土の保水性を高めるという役目があります。
ですが、盆栽に使用している樹木と、盆栽用土に貼る苔が求める日光/水分量がアンバランスな場合、どちらかが傷んでしまう可能性もあります。
できれば、別々に購入するより、セットで購入できる販売店から入手してください。
間違った組み合わせで植え込んでしまわないためです。
また、苔玉(苔盆栽)や苔テラリウムは、苔そのものを楽しむ方法として一般的になりました。
しかし、これもまた、コケに精通した販売店から購入しましょう。
コケは、見た目のかわいらしさが魅力的です。
盆栽の用土に貼り付けるのもよし、苔玉(苔盆栽)を育てるのもよし……。
日々の手入れを怠らないようにして、ボタニカルライフを存分に楽しんでください。