新緑と紅葉、落葉を楽しめる楓は、もみじと同様、葉のあり方で四季を感じさせてくれるという魅力があります。
あなたが「花ではなく紅葉を楽しみたい」という方なら、楓もおすすめしたい樹種のひとつです。
今回は、初心者でも育てやすいとされる楓について、季節ごとのケア、日常の育て方や剪定方法など、幅広くご説明します。
どうぞ参考にして、秋に紅葉を楽しんでください。
楓(カエデ)とは?楓の特徴は?

カエデは、モミジと同じカエデ属で、日当たりや水、風通しを好む特徴をもつ樹種です。
しかし、真夏の焼けるような日差しには弱い面をも持っています。
そして、害虫に好まれやすい/カビや菌を原因とする病気にかかることもあります。
モミジとの違いは、単に、葉の形で区別します。
カエデ=カエルの手のヒレのように、切れ込みが浅いもの
モミジ=人の手のように、切れ込みが深く明確なもの
同じカエデでも、葉の切れ込みの数が3つのもの、5つのものなどいくつか種類がありますので、これも面白いところかもしれません。
「楓(カエデ)の作り方」基本的な考え方
楓は、もみじと同じものですので、仕立て方の基本的な考え方もまた同じです。
- 幹をどうやって太くし、形作るか
- 折れやすい枝にどう針金かけしていくか
- 剪定ではどの枝を切ればいいのか
このような点が、盆栽初心者に「わかりづらい」と感じられるものですね。
小品(小さな盆栽)をどう形作るのかについて、「そもそも論」の部分をとても分かりやすく解説した動画がありますのでご紹介します。
35分と少しありますので、時間のあるときにご覧になっておくと、楓やもみじの仕立て方の基本が理解できるはずです。
楓(カエデ)の育て方年間スケジュール
カエデ属の楓の育て方は、もみじとほとんど変わりません。
カエデ属の特徴を知り、最適な年間スケジュールを理解しておきましょう。
季節ごとの手入れ方法をご紹介します。
冬~新春
冬の間に剪定を行います。
樹木の生長が一旦止まり、勢いが落ちているので、冬の間が剪定に適しています。
楓(カエデ)の剪定
楓(カエデ)の剪定は、「徒長枝(とちょうし)」を盆栽専用バサミを使ってカットするのが基本です。
冬の間の剪定は、葉もなく手入れがラクですし、樹木にも負担をかけないからです。
徒長枝とは、そもそも葉のあった状態のシルエットを乱す、伸びすぎた枝のことを指します。
新芽が出始める頃までに、この徒長枝をカットすれば、そもそもの樹形を取り戻すことができますし、徒長枝を剪定することで、新しい細かい枝の増加も期待できます。
春~夏前
芽吹きから新緑の頃には、芽摘みや植え替え、葉刈りが必要です。
本格的な成長期に入りますので、樹形や葉の健康状態を考えた作業が大事です。
以下に、葉刈りについての動画をご紹介しておきます。
楓(カエデ)の芽摘み
新芽が確認できたら、必要に応じて「芽摘み(めづみ)」をしましょう。
どの新芽を伸ばすのか、摘むのかで、これからの「シルエット」が決まるからです。
成長期の剪定は楓(カエデ)に大きなダメージを与えますが、芽摘み(めづみ)は最小限のダメージで枝ぶりや葉のあり方をコントロールできますので、とても大切な作業です。
新芽がしっかり見えてきたら、取りたい芽と残しておきたい芽を決めます。
取りたい芽に関しては、芽を丁寧に開き、その中に包まれている芯(芽)をピンセットでしっかり摘み取りましょう。
楓(カエデ)の葉刈り
葉がおおむね出そろった頃、つまり夏場に盆栽専用のハサミを使い「葉刈り(はがり)」をします。
葉が混み合うと、うどんこ病などカビや菌を原因とする病気が発生しやすくなりますので、その予防です。
また、「葉の大小バラバラなのがいや」という方は、小さな葉をカットし「葉刈り(はがり)」をしてください。
次の葉が出てくるまでの間は、葉の間の通気性も確保できます。
また、次に出てくる葉は、他の葉と同じ大きさになります。
葉刈りについては以下の動画を参考にしてみてください。
楓(カエデ)の植え替え
3月頃は、楓の植え替えに適しているタイミングです。
本格的な成長期の前に植え替えしておけば、植え替えに伴う、根切りに対する「リカバリー」も期待できます。
たとえば、鉢底の穴から根が出てきた、用土の表に貼ったコケが裂けた、水やりをしてもなかなか浸透しないといった現象がみられれば、それは植え替えのサインです。
楓の植え替えは、2~3年に1度が目安とされていますが、個体差や鉢の大きさも関係しますので、日々の水やりのときにつぶさに観察しておきましょう。
もしも同じ鉢のまま育てたいときは、根から土を丁寧におとし、あからさまに「傷んでいるな」と思われる変色した根を中心に切ります。
そして全体的におおむね3分の1程度を切り、新しい用土を用意して植え替えをしましょう。
夏
葉が多く茂る楓は、夏は病気をおこしがちです。
その理由は、日本の気候。
高温多湿により、病気のもととなるカビや菌が繁殖してしまうからです。
楓(カエデ)の葉切り
もみじと同様、楓も夏の間に盆栽専用バサミを使い「葉切り」を行います。
葉が混み合い、葉から蒸発する水分がたまりやすい状態のままですと、うどんこ病などにかかってしまいますので、ある程度葉を整理して、風通しを確保しなければなりません。
また、葉が混み合うことによって日に当たることのできない葉は、秋にうまく紅葉できません。
このために重要なのが、「葉切り」です。
- 葉を縦に半分に切る
- 葉先のとがったところを適度に切り落とす
などの方法で、葉の混み合いをできるだけ解消しましょう。
秋から冬
紅葉を堪能し、完全に落葉したら、樹形を整える「針金かけ」のタイミングです。
「これからどんな樹形にしたいか」のイメージもわいている頃ですので、どの枝をどう導きたいかをしっかり考えましょう。
楓(カエデ)の針金かけ
落葉し、枝の状態がしっかりと見える時期に行うのが「針金かけ」です。針金には盆栽用のものを用います。
自然 アルミ(盆栽)針金 カラー 150g 1.5mm葉や芽を傷つける心配もありませんし、その年に伸びた枝もまだ固くないので、針金かけに適しています。
針金かけにはいくつもの方法がありますが、比較的簡単な方法は、次の手順で行います。
- 針金を、かけたい枝の2~3倍の長さにカット
- 幹から枝にかけて、下から上に45度の角度でゆるめに巻き付ける
- 希望する形に曲げる(一気にではなく、長期間で少しずつ)
- 数週間から数カ月様子を見る
- 枝に食い込みそうになったら、すぐに針金を外す
※針金かけは、樹種や個体の状態により適する方法が異なります。今回は比較的簡単な例です。
「チシオモミジ」というもみじの、柔らかく若い木への針金かけの動画がありますので、参考までにご紹介します。
楓(カエデ)の盆栽の基本的な育て方
ここまでは、年間を通した手入れのイベントをご説明しました。
以下では、毎日の育て方についてご紹介しましょう。
日々の育て方次第で、美しい紅葉がみられるかが左右されますので、きちんとお手入れしてください。
楓(カエデ)の冬の育て方
楓の盆栽の冬の置き場所は、室内の窓際、半日陰です。
楓は寒さに弱いとされる樹種ですので、霜に当たったり、寒風にさらしたりすると弱ってしまう可能性があるからです。
水やりは、2~3日に1度を目安にしてください。
用土が乾ききってしまう前に、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水やりします。
水やり直後の重さを覚えておいてください。
鉢を持ち上げたとき、軽さを感じたら水切れを起こしているかもしれませんので、そのときはすぐに水を与えましょう。
楓(カエデ)の春の育て方
楓の盆栽の、春の置き場は、直射日光の当たる場所です。
芽や枝が出始める成長期に入りますので、積極的に日光に当てましょう。
ですが、いきなり1日中直射日光に当てるのではなく、1日のうち数時間外に出す方法で、少しずつ慣らしていきます。
ただし、西日は避けた方が無難です。
水やりは、1~2日に1度を目安に。
成長に伴い、水を多く求め始めるからです。
同時に、成長を助けるために肥料も与えましょう。
肥料は、ゆっくり溶け出す固形タイプがベストです。
梅雨の頃から真夏にかけては、施肥は避けます。
水やりのときには、葉の表面と枝(茎)を観察してください。
アブラムシが新芽を狙って集まってくることがあり、対処が遅れると新芽がうまく広がらない、茎が伸びないといったトラブルが生じるかもしれないからです。
水やりにしろ、虫害にしろ、日ごろの観察を怠らないようにすれば、問題を未然に防ぐことができます。
楓(カエデ)の夏の育て方
夏は、直射日光の当たらない屋外に置きましょう。
そして、エアコン室外機の風が当たらない場所を確保します。
じりじりと照り付ける日光や、エアコン室外機の風が、薄くデリケートな楓の葉を傷めてしまうからです。
もしも、ベランダなどで直射日光を避けられない場合は、日よけとなるもの(よしずやオーニング)を設置し、日陰を作りそこへ置きます。
水やりは、1日に1~2回が目安です。
デリケートな葉から水分が蒸発し、縮れてしまうことを防ぐために、葉水を与えるのも効果的です。
楓(カエデ)の秋の育て方
楓の盆栽の秋の置き場所は、日の当たる場所、庭やベランダの屋外です。
しっかり紅葉させるために、昼と夜の寒暖差を大きく感じさせるためにも、屋外に置くことはメリットがあります。
水やりは、1~2日に1度を目安に。
外気の乾燥が目立ち始める頃ですので、必要に応じて調節してください。
この頃には、成長はほとんど止まっていますので、多くの水は必要としません。
固形肥料も与えてください。
春から夏にかけての成長で疲れ始めていますし、また、来年の成長のための準備をさせてあげましょう。
もし、手持ちの盆栽が「ミニ盆栽」のときは、このタイミングの肥料は不要、ないしは多く必要としません。
まとめ
楓は、もみじと同様、初心者にも育てやすい樹種といわれます。
ですが、盆栽の場合、大地に根を張る庭木と違い、用土が少ないという点で多少ハンデがあります。
この点をしっかり理解したうえで、正しい育て方を理解し、日々しっかりと健康状態を観察してあげましょう。
上手な付き合い方ができれば、室内で春は新緑を、秋には紅葉を楽しめるのです。
どうぞ、かわいがってあげてください。