藤は、花の風情や、花のあとの緑も楽しめることから、人気があります。
桜と同様、花が咲けば「春が来たな」と感じさせてくれますし、大きな藤棚なら夏場に日陰を作ってくれるところも魅力でしょうか。
ですが、「盆栽で藤を楽しむ方法は…」とお悩みの方もいらっしゃることでしょう。
今回は、盆栽で藤を育ててみたいあなたに、藤の特徴や育て方や管理法など、初心者向けの情報を幅広くご説明します。
藤とは?どんな特徴がある?
フジは、マメ科フジ属の植物です。
太陽を好み、水が大好き、暑さや寒さにも比較的強いのが特徴です。
つるがどんどん伸び、品種によってはつるが10メートル以上になるものもあります。
また、花の房の大きさ(長さ)や、ひとつの花の大きさもさまざで、園芸品種としては多くの種類があります。
「藤の盆栽」季節ごとの育て方
上でもご説明したとおり、藤は太陽の光が大好きです。
そして、つる性であることを踏まえて、季節ごとに適した育て方をしなければなりません。
新春に行う藤の盆栽の育て方
植え替えや剪定は2月から3月までに行います。
寒い間は成長が止まっていますので、藤にダメージをほとんど与えずに済むからです。
植え替え
もし、今まで通りのサイズで育てたいのなら、根をカットしなければなりません。
ミニ盆栽用の根かきを使い鉢底方向から土を丁寧にほぐし、幹のすぐ下部分、3分の2の土はそのまま残してください。
古い根をカットし、新しい細目の根はできるだけ残します。
そして、残した根を鉢の大きさに合うようにくるくると巻いて、新しい用土に植えます。
注意点としては、「藤は根を切られるのを嫌う」ということです。
ですが、翌シーズンの花を充実させたいなら、あまり根を伸ばさない方がよいともされています。
少々コツが必要ですので、盆栽店や庭師にアドバイスを仰ぐか、書籍で正しい知識を身に着けて臨むと、失敗を最小限にとどめることができるでしょう。
おすすめの書籍は、「フジ (NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月)」です。
剪定
藤の樹形を整える意味での、本来の剪定は冬の間に行います。
成長期ではありませんし、花芽や葉になる芽がしっかり目で見て理解できるからです。
好みの樹形を目指して、不必要な伸びすぎた枝をカットしましょう。
また、不必要な枝が出てきていれば、付け根部分から切り落としておきます。
以下に藤の選定方法について詳しく手順が開設されている動画をご紹介しますので、参考にしてみてください。
初夏に行う藤の盆栽の育て方
花を咲かせ、そして花が終わる初夏には、「花がら摘み」「芽つみ」を行います。
できるだけ藤の力を残すこと、伸びやすいつるを適正な長さに保つことが大事です。
花がら摘み
花が終わると、すぐに「花がら摘み」をします。
終わった花をつけたままにしておくと、実ができ(結実)、体力がそちらに奪われてしまうからです。
花を一つひとつ取るのではなく、花房の根元すぐの部分、葉を3~5枚残す位置で園芸バサミを使い切り落とします。
芽摘み
花が終わった5月から6月に、「芽摘み」をします。
成長著しい時期に入りますので、このタイミングで樹形のコントロールをしなければならないからです。
芽摘みは、徒長枝(とちょうし)、つまり花の付かないつるを園芸バサミを使いカットするだけで完了です。
葉が5枚ほど開いたら、葉を1枚だけ残して切り落とします。
このときのコツは、「できるだけ早いタイミングで」ということです。
夏から秋に行う藤の盆栽の育て方
この頃には、樹形を整えることと、施肥が大事です。
剪定
夏には、必要に応じて2度目の剪定をしなければならないかもしれません。
藤はとても強く、茎や葉が展開するスピードが速いからです。
8月頃、翌シーズンの花芽を見つけることができます。
もしも、あまり長くしたくないときは、幹に近い部分の花芽を3つから4つ残し、その先を切ってしまいましょう。
その他にも、幹から直接つるが出てくることもありますので、日々確認しながら、見つけ次第剪定します。
以下の動画に詳しい選定方法が紹介されていましたのでご参考ください。
施肥
花が終わった藤には、「お礼肥」と呼ぶ施肥を与えます。
このとき、選ぶべき肥料は化成肥料ですが、窒素の多い肥料を選んでしまうと次のシーズンの花付きが悪くなる傾向にありますので、しっかりと肥料選びをしましょう。
冬に行う藤の盆栽の育て方
冬の間の藤の盆栽の手入れは、「施肥」です。
具体的には、12月から2月末まであたりに、緩く効くタイプの肥料を与えます。
その年の成長と、次のシーズンの花のために有機肥料をあげてください。
藤の盆栽の日々の管理はどうすればいい?
ここまでは、シーズンごとの「育て方イベント」についてご説明しました。
ですが、日々の管理も大切です。
ここからは、日々の管理方法についてご説明します。
藤の盆栽の春の管理
春の藤への水やりは、1日に1回が目安です。
年間を通して日の当たる場所に置いてください。
春は、虫害やカビを原因とするトラブルも発生しはじめます。
- アブラムシ
- カイガラムシ
- ケムシ
- ハダニ
- シャクトリムシ
- うどんこ病
このようなトラブルを回避するため、必要に応じて殺虫と殺菌の両方に効果のある薬剤を使用します。
藤の盆栽の夏の管理
夏の水やりは、1日に2回が目安。
置き場所は、エアコンの室外機の排気が当たらない半日陰がベストです。
直射日光やエアコン排気で鉢が熱くなり、用土に含まれる水が温まることによって根が傷むことがあるからです。
もし、ベランダに藤の盆栽を出すときは、コンクリートの上に直置きしてはいけません。
直射日光同様、熱せられたコンクリートの熱を鉢や用土が拾ってしまうからです。
木質、もしくは樹脂製のテーブル状のものを手に入れ、そこへ置くようにしましょう。
藤の盆栽の秋の管理
秋の水やりは、2日に1度が目安です。
置き場所は、再度直射日光が当たる場所に戻します。
ですが、いきなり1日中直射日光に当てないよう、1日数時間から始めます。
藤の盆栽の冬の管理
冬の水やりは、3日に1度が目安です。
置き場所は、やはり直射日光が当たる場所がよいでしょう。
しかし、注意点もあります。
藤は耐寒性が比較的高い樹種ではありますが、それでも霜にあたったり、寒風に常にさらされたりしないようにしなければなりません。
凍結や寒風から植物を守るために、プロは「室入れ(むろいれ)」という作業を行いますが、盆栽初心者には室作りの費用や作業はとても大変です。
室入れが必要と感じられたら、
- 室内に取り込む
- 発泡スチロールの箱に入れる
- 半透明の衣装ケースに入れる
といった工夫をしましょう。
箱状のものを使う場合、排水やある程度の換気のため、箱の底に穴をあけなければなりません。
発泡スチロールの箱なら、小さめのクッキー型や鉄パイプで簡単に穴あけできますので、盆栽初心者にも簡単に活用できます。
箱状のものを使用する室入れの前には、殺菌殺虫剤を使用します。
室の中は暖かいので、虫や菌の温床となる可能性が高いからです。
しっかり藤の幹やつるを手入れしてから、室入れをしましょう。
詳しくは以下の動画を参考にしてみてください。
まとめ
藤は、桜と同様、日本の春に欠かせない花を咲かせる樹種です。
藤の花が揺れる様をかたどったかんざしも人気が高いですし、藤を文様化した家紋もあります。
藤が古くから日本人に愛されてきた証ですね。
毎年、藤の名所を訪れるというあなたにとって、「藤を盆栽で楽しめる」のは、とても楽しいことでしょう。
夏と冬の管理さえしっかりできれば、毎年藤の花を堪能することができる盆栽。
ぜひ、チャレンジしてください。