松は、「盆栽らしい盆栽」で、とても魅力的です。
特に五葉松は、手入れのしやすさで人気の樹種です。
常緑樹ですので、年間を通してグリーンを楽しめるのも人気のポイント。
「ミニ盆栽」といわれる小品も多く流通していますので、初心者にも手が届きやすくなっています。
今回は、五葉松を盆栽で楽しむヒントと、四季折々の育て方についてご紹介します。
五葉松とはどんな木?特徴は?
五葉松は、マツ科マツ属の樹種で、標高の高いところに自生します。
そのため、日光がしっかり降り注ぐところ・風通しの良いところを好み、寒さに強いという特徴があります。
水やりについても、盆栽に多く取り入れられる樹種の中では、比較的難しく考えなくてもよい木です。
特に水やりに気を付けなければならない真夏でも、朝晩の2度で済みます。
これらの特徴から、盆栽初心者にも管理しやすく、人気があるのが五葉松です。
うまく成長させることができれば、どんどん風格を増しますし、ほぼ1年中青々とした葉を楽しめます。
ちなみに、五葉松は1箇所から5本の葉を出します。
これが「五葉松」のいわれです。
【年間スケジュール】五葉松の手入れや水やり
五葉松は、育て方にさほど神経質にならずに済む樹種のひとつです。
ですが、全く気を遣わずに、ただ水を与えていればよい、というわけではありません。
季節ごとに五葉松の手入れ法をご紹介します。
年末頃から新春
もし、あなたが盆栽の五葉松を好きな枝ぶりに育てたいなら、この頃に針金かけをします。
葉を一番楽しみたい春から秋を避ければ、針金かけの作業中に葉を傷めたり落としたりすることもさほど問題がないからです。
また、五葉松が休眠期であることもあり、今の枝ぶりをどのようにすればよいのかイメージもしやすいはずでしょう。
水やりの頻度は、3日に1度が目安です。
春
もしも、手元にある五葉松の鉢の底から根が出ていたり、水をやってもうまくしみ込んでいかないと感じたりしたら、3月頃に植え替えをします。
本格的な成長期を前に、一回り大きな鉢に植え替えておけば、その後の五葉松の成長もスムーズだからです。
もしも、小さいままで育てたいなら、五葉松の根を切り詰めて、同じサイズの鉢に戻しましょう。
こうすれば、根が詰まって水はけが悪くなり、結果として根腐れに発展することを予防できます。
ですが、基本的に五葉松の植え替えは、3年に1度程度が目安とされています。
水の通り具合や鉢の裏を観察しながら、必要なら植え替えを、と覚えておくとよいでしょう。
水やりは冬より回数を増やし、2日に1度を目安にしてください。
初夏
5月から6月の間には、剪定や芽摘みをします。
新しい芽や枝がふきはじめますので、「これ以上ここは伸ばしたくない」というポイントが見え始め、形を整えるのに適した時期だからです。
シルエットを崩す小さい枝や葉を剪定し、輪郭をキープするよう整えます。
水やりは1日に1度に増やします。
夏
夏は、特に必要な手入れはありません。
強いていうなら、葉や枝、幹の観察です。
葉が茂り蒸れてしまいますし、松を好む害虫も活発に動いています。
五葉松の健康状態を観察しながら、必要なケアを施しましょう。
なお、真夏に限り、水やりは1日に2度が目安に回数を増やします。
特にミニ盆栽(小品)のゴヨウマツは、注意をしてあげてください。
用土の量が少なく、それに比例して蓄えられる水分量が少ないからです。
いくら乾かし気味に育てることを好むゴヨウマツといっても、水切れは厳禁です。
秋
10月から11月頃には、葉すかしをしましょう。
春に伸びた葉が落ち始めますので、すかさずピンセットで抜き取ります。
葉が上に、上にと伸びるのが、マツ類の美しさです。
そのシルエットを乱す、下向きに生えた葉を抜くことで美しさを保ちましょう。
葉すかしには、「強い芽には葉を多く」「弱い芽には葉を少なく」することで、芽の力のバランスを整える意味もあります。
水やりは、冬に向けて回数を減らし、1日に1度を目安にします。
五葉松の管理は?どこに置く?
五葉松は、そもそも高地に自生している樹木です。
その点に留意して、置く場所をしっかり考えなければなりません。
日光の当たる場所
五葉松の盆栽は、日光の当たる場所、少なくとも半日陰に置いて管理してあげてください。
五葉松は日光を好む性質ですので、たとえミニ盆栽(小品)といっても、1年中室内で育てるわけにはいきません。
そして、春~秋には少なくとも3日に1度、冬には1週間に1度は直射日光に当ててください。
風通しのよい場所
五葉松の盆栽は、風通しのよいところにおきましょう。
葉が多い部分に湿気がたまり、カビや菌を原因とする病気を引き起こしてしまうためです。
しかし、枯れてしまうため「暖房や冷房の風」は適していません。
自然の風通しがある場所を選んで置くようにしましょう。
五葉松の虫害/病気に関する注意
基本的に育てやすいとされる五葉松ですが、全くトラブルがないわけではありません。
五葉松を好む虫もいますし、カビや菌が原因で起こる病気もあります。
五葉松を好む虫
五葉松は育てやすい樹木とされていますが、気を付けなければならない害虫がいます。
特に注意したいのは、
- アブラムシ
- ハマムシ
- カイガラムシ
- (各種)毛虫
- シンクイムシ
- ワタムシ
- アカダニ
などです。
日光を好む五葉松です。
庭先やベランダに出すことも多いので、知らぬうちにこのような虫がついていることがあります。
目に見える虫ならば、ティッシュペーパーなどでつまむという方法もありますが、小さな虫は駆除しづらいものです。
毎日観察して、被害が大きくならないうちに駆除するのが一番です。
場合によって専用の殺虫剤を利用しましょう。
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五葉松がかかりやすい病気
葉が多く、密集しやすい五葉松は、風通しの良い場所に置かなければなりません。
これは、葉の密度が濃い部分に湿気がたまり、カビや菌を原因とする病気を引き起こしてしまうからです。
病気の代表例は次のようなものです。
- 葉サビ病
- すす葉枯れ病
- 褐斑葉枯れ病
- 赤斑葉枯れ病
このような病気を防止するために、置き場所を厳選する、葉が密集していたら葉すかしをするという管理をしなければなりません。
ですが、もしも異変を感じたら、本当に病気なのか、根詰まりで水分を吸い上げられなくなっているのかをまず判別します。
そして、「やはり病気だ」と判断できれば、それに適した薬剤で対処しましょう。
病気にかかった五葉松の葉や枝は切り取り、盆栽からすぐに遠ざけます。
病気の広がりを予防しなければならないからです。
五葉松に肥料を与える時期
育てやすい五葉松も、成長著しい時期には肥料を求めます。
特に新しい芽や枝が出始める3月頃から、葉の成長が止まる11月頃までは、養分が必要です。
五葉松の根元ではなく、鉢の縁に有機性固形肥料を置きます(置き肥)。
ですが、梅雨や真夏には肥料は与えません。
肥料によっては、梅雨の湿気でカビが生えることもあります。
真夏は成長しませんので、栄養を吸収することもほとんどありません。
この理由から、梅雨や真夏には肥料を与えないのです。
まとめ
比較的育てやすい五葉松ですが、盆栽ならでは、小品(ミニ盆栽)ならではの注意点がありました。
手入れや水やりといった管理次第では、弱ってしまうことも少なくありません。
育て方に十分注意し、青々とした美しい葉を楽しんでください。
本格的な五葉松の育て方の中には、針金かけもあります。
まずは年間を通じての五葉松の育て方を覚え、少しずつステージアップしていってください。