盆栽の中でも、「The盆栽」とイメージするのは、松ではないでしょうか。松にはそれだけ盆栽としての魅力がありますし、実際に仕立てるまでの工程も比較的容易なことから人気なのです。
今回は、盆栽としての松の魅力についてご紹介しましょう。
どのような点に気を付けながら育てればよいのかの基本から、魅力的な盆栽に仕上げるコツなどについて解説しますので、お役立てください。
松の盆栽はどうして人気?
松の盆栽は、どっしりとした幹や枝が魅力的です。そして、常緑樹ですので、いつでも青々としていて自然の生命力を感じることができます。
また、舎利(しゃり)や神(じん)を作ることができれば、さらに風格を感じます。樹皮がはがれ、内部がむき出しになった舎利(幹部分)や神(枝部分)は、自然の力強さを見せつけてくれるのです。
松の種類
一口に「松」といっても、いくつかの種類があります。それぞれに特徴がありますが、基本的な育て方や鑑賞法は同じです。ここでは代表的な3つの松をご紹介します。
五葉松

盆栽初心者におすすめなのが、「五葉松」です。暑さや寒さに強いこと、難しい手入れが不要なことで、盆栽入門者にも好まれます。
黒松

五葉松と人気を二分するのが、「黒松」です。育てやすさや丈夫さが特徴ですし、成長が早いので手はかかる分、樹形を整える基礎的な技術を“学ぶ”にはもってこいでしょう。
トド松
樹形を整えるための作業のひとつ、剪定を嫌うという特徴を持っているのが「トド松」です。どちらかというと寒いエリアで自生しているということもあり、「涼しく暗めのところで、放任主義で育てる」のが基本です。
松の盆栽の「愛で方」
松の盆栽は、いくつかのポイントから鑑賞します。特に目を凝らしていただきたいのは、次のポイントです。
立ち上がり
根元から立ち上る幹の、最初の枝の部分までを「立ち上がり」と呼びます。この部分こそ、特に松独特の力強さや美しさを感じられるポイントです。松の盆栽で、この「立ち上がり」がまっすぐのものはほとんどありません。つまり、仕立ての第一段階で松ならではの力強さが決まってしまうといってもいいでしょう。
正面
盆栽は、松でなくても「正面」があります。正面から見た松の盆栽は、まさしく「自然美」をアピールするポイント。枝ぶりはどうか、葉の付き具合はどうかなど、トータルでの美しさを鑑賞しましょう。
もちろん、365度どこから見ても美しい盆栽がベストですが、生け花同様に「どこから見られるのが良いのか」をしっかりと“計算”しながら手入れをしてください。
根張り
根の張り方がしっかりとしているかどうかも大事なポイントです。しっかりと根を張る様子は、「大自然のミニチュア」たる盆栽の一番の面白さではないでしょうか。
これは、松に限らずですが、苗の段階で入手する際、特に気を付けて選んでいただきたいと思います。
樹皮
松ならではの鑑賞ポイントといえば、「樹皮」ではないでしょうか。上でも触れた通り、舎利(しゃり)や神(じん)は、松という木の風格に大きく影響します。幹が太るときに樹皮が割れ、捲り上がるのはむしろ好ましいことです。もちろん松そのものが健康的であることが重要で、それでもなお樹皮が捲れてくるのは古木を感じさせる鑑賞ポイントです。
四季を通じて
松は常緑樹です。1年を通じて緑を楽しむことができますが、やはり成長に伴い葉の入れ替わりや枝の伸びを感じることができます。これは、日々眺めることで観察できるものですので、松の“健康チェック”と共に楽しみたいものです。
厄除け・縁起の良さも松の魅力のひとつ
とがった葉は魔除け/厄除けとされ、何十年・何百年と生き続けることから縁起物とされる松。お正月に飾る門松も、まさしくこれらの理由で松を使用しているのです。
どなたかへのプレゼントにするのならば、南天など華やかな実をつけるものと寄せ植えした松もよいでしょう。寄せ植えの手入れが難しいと感じているようであれば、赤い花をつける梅の盆栽とセットで贈るのもひとつの方法です。
寄せ植えやペアとなった盆栽は、華やかさだけでなく、それぞれの成長を見守る楽しさもあります。

また、せっかく縁起物の松を手に入れるのであれば、「日本庭園風」の器にこだわるのも楽しさのひとつです。松の手入れをしながら、“マイ池”を眺める…毎日眺めてもあきない楽しみが、またひとつ増えますね。
松の手入れの方法
上でも触れた通り、松にはいくつかの種類があります。それぞれに特徴はありますが、基本的な手入れの方法は以下の通りです。
※松の種類によって多少異なります。
新春
本格的な成長期を迎えるまでは、
- 葉抜き(葉のバランスをとる作業)
- 剪定(枝ぶりを見ながら調整)
- 針金かけ(枝をどう動かすかを決め樹形の調整)
- 植え替え(盆栽の鉢を大きくしたい場合)
夏まで
- 施肥(成長期直前に肥料を与えることで、葉や根に栄養を届ける)
初夏
- 芽摘み(植え替えをしておらず、葉に勢いがあれば)
初秋~晩秋
- 芽かき(芽摘み後に伸びてきた葉のうち、不要と思われるものを摘む)
- 古葉落とし(次の年に若葉が出やすくする準備。ピンセットで抜く)
冬
- 剪定(間延びしたように伸びた枝を切り落とす)
まとめ
松の盆栽は、まさしく「盆栽」と思わせてくれる一品。このこともあってか、近年人気の「ミニ盆栽」にも多く見られます。
小さくとも、大きくとも、大地に根を張るイメージは美しさと力強さを感じさせてくれます。
特に五葉松は盆栽の初心者にもおすすめ。育てやすいうえに、育てているうちに風格が現れてきますので、「初めての盆栽」にはうってつけなのです。
「盆栽に興味がある」、「これから盆栽を始めてみたい」という方は、ぜひ松から手掛けてみてください。