「盆栽に興味はあるけど…」
そう思っているあなたにとって、盆栽の作り方や育て方が心理的なハードルとなってはいませんか?
買ってくる盆栽を育てる、樹木を鉢に植えるところから始める、実から育てると、盆栽の世界への入り口は三つあります。
今回は「買ってくる盆栽」「樹木を鉢に植える」パターンに沿って、盆栽の作り方・育て方をご説明します。
「意外にカンタンかも」と思っていただけることでしょう。
買ってくる盆栽の育て方
盆栽初心者にとって、心理的ハードルが低いのは、「既に鉢に植えられている盆栽を買ってくる」方ではないでしょうか。
形は出来上がっていますので、「これからどう育てるか」にだけ注力すればよいので、不安なことは少し減るはずです。
このとき、注意すべき点についてご説明しましょう。
育てやすく、丈夫な樹種/植物を選択する
盆栽初心者にまず心掛けてほしいのは、「育てやすい樹種から手掛ける」ことです。
たとえば、公園や街路に植えられている樹木は自由に根を広げることができますが、盆栽はそれができません。
この点から、まずは丈夫で比較的少ない水やりでも耐えてくれる樹種/植物を選び、「鉢で植物を育てる方法」にあなた自身が慣れていかなければならないのです。
信頼できる店/相談できる店で買う
今や、通信販売でも盆栽を手に入れることはできますが、注意が必要。
通信販売ならではの問題もあるからです。
実際に木の丈夫さを見ることはできませんし、通信販売で使われている写真は一例で、「思ったイメージとは違うものが届いた」ということもあり得ます。
通信販売ならではの問題を回避するためには、評価の高いショップ、いつでもメールや電話で相談に応じてくれるショップを選ぶとよいでしょう。
もちろん、近隣に盆栽を取り扱う園芸店があればより安心です。
「寄せ植え」を避ける
寄せ植えは、見栄えが良いのでつい選びたくなってしまうものですが、初心者の方にはおすすめしません。
樹木や植物の組み合わせが適切でなければ、「水や日光をどのくらい求めるか」など条件が異なり、管理が難しくなってしまうのです。
「盆栽の作り方は?」「盆栽の育て方は?」といったスタート地点にいる初心者は、できるだけ寄せ植えを避けるとよいでしょう。
ひとつの植物をしっかり育て、「鉢物」との接し方を学ぶことが盆栽作り初心者の目標です。
樹木を鉢に植えるところから始める盆栽の作り方
樹木や鉢を選び、あなたの手で植える盆栽は、オリジナル性が高く、とても愛着が持てるものとなってくれます。
ですが、揃えなければならないものも多少多くなり、手間暇がかかるのも事実です。
その一方で、土の中がどうなっているのかを自分で理解しておけるというメリットもあります。
では、樹木を鉢に植える方法で何が必要か、そして植える手順をご説明します。
盆栽の作り方【必要なもの】
一からあなたの手で植える盆栽には、次のようなものが必要です。
なお、盆栽入門者におすすめな「盆栽入門お手入れ10点セット」のようにセットになった便利な商品もあります。
盆栽の作り方【手順】
では、上でお伝えした品物を準備する意味や選び方を踏まえながら、植え込みの手順を追っていきましょう。
育てやすい樹木/植物を選ぶ
盆栽初心者や、多忙な方でも育てやすい丈夫な樹木/植物を選びましょう。
いきなり難易度の高い樹木/植物を選んでしまうと、「鉢物育て」の初回でつまづき、悲しい思いをしてしまうかもしれません。
ある程度希望する樹形に近いのものが手に入れば、さらにイメージが膨らみます。
鉢(器)を選ぶ
鉢(器)は、樹木/植物を引き立てる重要な役割を持っています。
初心者におすすめとされるのは、円形で、深さが5センチ程度のものです。
鉢には様々なサイズやデザイン、色がありますが、あなたが植え込みたい樹木/植物とのバランスをしっかり思い描いて選んでください。
盆栽の世界には「鉢映りが良い/悪い」といった表現があるほどです。
もし植え込んでみて、鉢の方が先に目に付くようなら、俗にいう「悪目立ち」している状態で、調和がとれていない証拠です。
鉢底網を鉢の底に敷き、針金を通す
樹木/植物がしっかり用土に根付くまでは、灌水(水やり)の度に土が鉢底から流れ出してしまいます。
これを予防するため、鉢底網を敷き込みましょう。
鉢底に敷いた鉢底網に針金を通し、鉢の左右に飛び出る状態にしておきます。
これはのちに、用土と樹木/植物を固定するものですので、長めに準備してください。
用土を準備する
次に、樹木/植物を植え込む前段階へ…。
水はけのよい状態を保つため、鉢底に粗い「ゴロ石」と呼ばれるものを薄く敷きます。
その上に、「ふるい済み用土(樹種/植物ごとに適した用土がある)」を入れましょう。
(自分でふるいにかける用土もありますが、ふるい済みならひと手間減ります)
鉢の3分の1程度の深さまで用土を入れたら、そこへ元肥(ゆっくり効き、根張りを助けるもの)をパッケージに表示されている量、土に均しながら投入します。
植え付け前の樹木/植物の根を整える
入手した樹木/植物の根についた土を一旦落とし、必要なら根を切ります。
これまで植えられていたポットや鉢から根を取り出します。
まず、鉢底に触れていた部分から、割り箸などでじっくり丁寧にほぐしていきましょう。
落とす土は、若い樹木なら半量程度、完成した樹木なら3分の1程度の量です。
ほぐしながら古い土を落としたら、残った表土のゴミや苔を歯ブラシで軽く掃きます。
樹種や状態にもよりますが、細い根や大きな根(太根)を切り詰める必要があるかもしれません。
そのときは、根切りばさみを使って丁寧に根切りをしてください。
植え付け
ここまでくれば、いよいよ植え付けです。
先に用意していた鉢に入れた用土に、一度樹木を軽く置いてみます。
位置/角度がおかしくないか、あらゆる角度から確認して、「ここでいい」というポイントを見つけてください。
鉢底から伸びている針金を、根の間を通すようにし、幹の根元まで導きます。
そして、ペンチを使って、ごく軽く仮止めしましょう。
粗方形が決まったら、用土を足します。
鉢をゆすると自然に隙間が埋まっていきます。
それでもうまく土が根の間に入っていかないようなら、割り箸などで土を込めましょう。
そして、盆栽用ピンセット(コテつき)のコテ部分で軽く表面を押し固めてください。
しっかり固定して灌水(水やり)
用土を丁寧に込めたら、仮止めしていた針金を、樹木の根元にしっかりと固定させます。
ほとんどの樹木はこれで十分ですが、細い根しかないなどのときはグラつくかもしれません。
その場合は、鉢の外側と根元を麻ひもで縛るといった方法が有効です。
固定が完了したら、しっかりと灌水(水やり)をします。
根元にたっぷり水を与えてください。
鉢底から流れ出る水の濁りがなくなるまで続けるのが理想です。
ですが、用土の込め方がうまくいっていない時は、新しい土も一緒に流れていってしまいます。
心配な時は、バケツに水をはり、そこに何度か浸けてみるのもいいでしょう。
水ゴケで1カ月ほど保護
水をたっぷり含ませた水ゴケで、用土の表面を覆います。
植え替えた後の樹木の根はとてもデリケートですし、まだ根もしっかり張っていません。
水切れしないよう、毎日優しく水ゴケの上から灌水(水やり)してください。
根が安定したら、表土に苔や飾り石を
水ゴケを取り、根が安定してきたことが確認できたら、いよいよ仕上げです。
用土の表面、表土に苔や飾り石をあしらいます。
特に苔は大事です。
土の表面から水が蒸発していかないよう、根を保護する「ラップ」のような役目を果たします。
どのような環境にも順応するのは「ハイゴケ」です。
盆栽用ピンセットで、丁寧に取り扱ってください。
【共通】盆栽の育て方に関して大事なこと3つ
既に出来上がった盆栽であっても、一から作った盆栽であっても、日々の世話はほとんど共通。
樹種によって、日当たりや水をどれくらい求めるかは違いますが、おおむね次のような点に注意しながら育てます。
1.灌水(水やり)
盆栽は、灌水(水やり)がとても重要です。
用土が完全に乾く前に、鉢の底から水が流れ出るまでしっかりと与えます。
目安は、冬場には2~3日に1度、夏場は1日に2~3回です。
水は用土の中に蓄えられた分量しかありませんので、完全に水切れしてしまうと枯れ始めてしまいます。
特にミニ盆栽の場合、用土がとても少ないので、水を蓄えておくことが難しいのです。
盆栽の世界に、「水やり三年」ということばがあるのにも納得でしょう。
2.葉水
樹木には、葉水も効果的です。
葉水とは、葉に水をスプレーすること。
葉からも水を蒸発させる樹木(特に広葉樹)は、特に夏場、葉水で活き活きとします。
ある程度害虫がつきにくくなる効果も見込めますので、葉や枝の様子を観察して葉水も与えてみてください。
3.置き場所
盆栽の作り方/育て方の中で、灌水(水やり)と同じくらい大事なのが「置き場所」です。
暑さ/寒さに弱い、直射日光を好む/好まないなど、樹種によって特徴は様々。
直射日光を好む木でも、日ごろ窓ガラス越しの日光しか浴びていないのに、突然庭やベランダに1日出されるとそれだけで弱ってしまうことがあります。
そもそもどんな環境を好む樹種なのかをよく知り、日ごろの日光不足を補う時はちょっとずつ慣らしていくという工夫をしましょう。
まとめ
盆栽は、ある程度仕上がったものを買っても、自分で植えても、日々成長していくものです。
丁寧に状態を観察し、いつ何が必要なのかを見極めてそれを与える…。
しっかり成長させて枯らさないようにすること、これが初心者にとって「はじめての盆栽の作り方」といってもいいでしょう。
いくら立派な樹木や鉢を用意しても、枯らしてばかりでは立派な「観賞用盆栽」にまで作り上げることはできません。
愛情を持って、毎日見守ってあげてください。